今鎮西の暗殺・中

しかし迎え撃とうとした興経、ある事に気がつきます。興経の側近で、近隣にその名の聞こえた勇将豊島内蔵丞興信が見当たりません。

「そういえば元就が『興経殿の持ってる三原っていう名刀見せて欲しいな!大事なものだから豊島くんに持ってこさせてね!』と言っていたから昨日元就の所へ使いにやったんだった

要は元就に図られたのです。恐らく豊島はもう殺されてることでしょう。しかしだからといって臆する興経ではありません。討手を自慢の弓で迎え撃とうとしました、が、なんと弓の弦が全部切られているではありませんか。実はこちらも既に元就に抱き込まれた部下が、事前に弓を使えなくしていたのでした。

「これほど運つきざれば、われ今、人手にかかることあらじ、天、われを亡ぼせり、人を恨むべからず」

こんなについていないなんて、さては天が俺を滅ぼそうとしているのだろう、そう大笑いして興経は右手に三尺五寸の青江の刀、左手に二尺八寸の盛家の刀を振りかざします。ここで大笑いできるあたり、性格に多少難有りといえどさすがは豪傑です。

興経は広縁の端に立って、討手が押し寄せてくるのを迎え打とうとしました。しかし元就も念には念を入れたのか、ここまで行けば執念とばかりに刀は全て刃が潰されていました。