元春の嫁取り(尚、周囲への相談はナシ)・後

さて驚いたのは熊谷信直です。なんせ娘に対して縁談の申し込みが来たのですから。それも因縁ある毛利家の次男・吉川元春です。

信直「少し訪ねたいのだが、貴公の父上が我が家と戦の際に熊谷の前当主を討ち取ったことは知っておられるかな?」

元春「もちろん承知の上です。ですがご息女を妻に迎えたいのです。お願いします」

信直「・・・・その、うちの娘の噂はご存知なのだろうか・・・?」

元春「もちろん存じ上げています。その上で妻に迎えさせて頂きたいのです」

熊谷「なんと有り難い・・・・!分かった、しかし一度お父上にもお話を通しておいた方がよかろう」

こういった経緯で元春の嫁取りは成功しました。しかしこれには元就も驚いたのか、詫び状を書いて「元春は犬のような子ですみません。よろしくお願いします」と改めてお願いしています。

その後、元春の策略通りに熊谷家は毛利家とともに戦国動乱を戦いました。確執は水に流し、一度も裏切ることなく元春と吉川、毛利家に尽くしてくれました。余程嬉しかったのか信直は臨終の際に息子たちに「元春殿に尽くすように」とまで言い残しましたといいます。

そしてここからが余談。

醜女と名高い妻を元春は非常に大切にして、生涯側室を置くこともしませんでした。二人の間には何人もの子を授かり、夫婦仲もとても良かったといいます。初めこそ打算がありましたが、それ以後奥さんを大事にした辺りがとてもいい話ですね。

吉川元春の嫁取り話。打算から始まった愛もある、といったところでしょうか。