和歌で知る心

さて山中鹿之助といえば勇将である事が多く伝わっている武将です。今回はそんな鹿之助の、意外に風流であった逸話をご紹介しましょう。

尼子一族の最後の(って訳でもないけど)一人である尼子勝久を擁立して尼子家の再興を願う鹿之助。彼の元には旧尼子家の家臣達が続々と集まって来ます。しかしそんな中、鹿之助は不思議に思っていた事がありました。

当時毛利家に仕えていた尼子の元家臣で、真っ先に合流するはずと考えていた神西元通の事です。尼子家再興を掲げたのに彼から何の連絡もありません。そこで叔父の立原久綱と相談して元通の本心を探る為に使者として僧を派遣ししました。

派遣された僧は扇を差し出しながら

「山中殿と立原殿は、神西殿と盟友でしたが、今は敵味方に分かれ会う事も難しくなっています。お二人はここは一筆頂いて、本人と対面しているかの様な気持ちでそれを眺めようとおっしゃっていました」

元通これに、

「古柄小野の本柏」(ふるかわおののもとかしわ)と書いて返しました。

これを受け取った鹿介と久綱。扇の文句は

「石の上 古柄小野 本柏 もとの心は 忘れなくに」

という古歌の一節で、元通は旧交を忘れていないのだと判断。再び僧を派遣したところ、元通は尼子再興軍に参加する事を表明したのでした。山中鹿之助、和歌で友人の心を知るお話。山中鹿之助は勇将であるだけでなく、古歌にも通じていた事が窺い知れる逸話です。