さて夜半まで語り合った二人ですが、途中元就がこのような事を言い出しました。
「あたなのご嫡子、隆家殿には未だにご縁組も、結婚の約束をしたものも無いと聞いております。そうであるなら私の娘に年齢も相応なものが居りますので、よろしければ娘を宍戸家に差し上げたいと思っているのですが、これを奥方とご相談為されてご了承頂けるのなら、私も本懐に思うのですが」
元源はこれを聞いて大喜びで、
「さても御年相応なご息女がいらっしゃるか!これは両家にとっても幸いなことです!」
と、早速奥方のところに行って報告し相談をし、その上で奥に元就を呼び込んで、
親同士相対した上でこの縁談を結びました。双方祝詞を仰せられるなど、その喜びは限りなかったといいます。
その後、元就は語表にて朝食を食べて、今しばし語り合いなどをされた後、自身の居城に帰って行ったと言います。こうして元就の娘、五龍局は宍戸隆家の元へ嫁ぐことになったのでした。
しかしこの話の何が凄いと言えば、婚姻を決めるのに「奥さんとも話し合って決めて下さい」と態々いう事です。この時代の結婚と言えば家の事で家庭の事ではないのですが、こう言われたら奥さんも納得するし嬉しいでしょうね。元就公、根回しも凄いと言うところでしょうか。
まぁ嫁がせた娘がちょっとアレですからね・・・・。根回しは必要だと踏んでおいたのかもしれません。娘のためにも。