尼子家に至った訳・前

これは尼子経久の出生と、尼子家に至るまでの話の一つとしての逸話です。ちょっと不思議な話でもあるので、物語のようにお楽しみください。

さて昔ある時、佐々木大膳大夫なる者が狩猟に出て出雲から伯耆へと向かっていきました。たどり着いた場所は人の行き交いも少なく、清流の流れる川がありました。佐々木、この川で少し休んで行こうかと近付くと、何やら声が聞こえます。そっと伺ってみると、一人の美女が裸で水浴びをしていました。

息を潜めながら近付いていくと、川端の石に衣がかかっているのを見つけました。この頃もはとても珍しいもので、蝉の羽のように美しくとても軽い衣でした。佐々木はこれを懐に入れ、近くの麻畑の中に隠れました。

さて美女が川から上がると、自分の衣がありません。この事に泣き始めたので、佐々木は偶然を装って美女に話しかけました。

「貴方は一体どなたですか?」

「私は天女です。天よりこの水の清らかさを見て、下って水浴びなどをしていました。ですが今自ら出てみると衣が無いのです。衣が無くては天にも帰れないので、どうして良いかわからず泣いておりました」

「それは御困りでしょう。とりあえず私についてきて下さい」

佐々木は着替えをこの天女に貸してやり、家に連れて帰りました。二人は夫婦となり、可愛らしい子供に恵まれました。