尼子家に至った訳・後

産まれた子の可愛さに絆されたか、それとも気が抜けていたのか。佐々木は天女も人の母親となったのでもう天上に帰る事は無いかと安心して、嘗て自分が彼女の衣を隠した事を告白しました。驚いた彼女は佐々木に「その衣は懐かしく思いますので、どうか見せては頂けませんか」と申し出ました。そして取り出して渡すや否や、彼女の体は空へと舞い上がっていきます。

「貴方との今生の対面はこれまでです。どうかその子を元気に育てて下さい。私はその子を天から見守っています」

そう言うと、天女は空の彼方へと舞い上がって雲の中へと消えていきました。佐々木はこの事を嘆き悲しんだと言います。

さて残された子供は成長した後、苗字の佐々木を天子、あまこと改めました。勿論この意味は「天人の子」という意味です。しかしその後、人から尼子の字は帝に恐れ多いのではないかといわれて「尼子」と文字を改めたそうです。

その子供の成長した名は経久。この天人と人の間に生まれた不思議な子こそ、戦国の勇、謀聖と呼ばれた男・尼子経久です。

出雲の地に伝わると言う、尼子経久出生の不思議な伝説です。昔話にある天女の話によく似ていますね。このような伝説が生まれるとは、やはり当時でも尼子経久という人物はどこか常人とは違う人物であったのかもしれません。