尼子経久、敵を討つ・前

今回は尼子経久と、とある人物の逸話です。少し後味の悪さがありますが、最後までお付き合い下されば幸いです。

尼子経久はある時、領内各地で多くの勇士や腕が立つ者を募集しました。この募集に多くの者が集まり、皆腕を競い合いました。その中に松吉、周りからは鬼吉と呼ばれる大男がいました。

この松吉という男、身分の低い百姓の出でしたがその体躯たるや六尺五寸ほどの巨躯の持ち主であり、鬼のように恐ろしげな容貌を持っていました。そして同時に、素手で木を引き抜き、槍を同時に五本振り回し、矢を十本同時にへし折るほどの怪力の持ち主でした。だけどその豪勇の割に無口で大人しい男で、何を聞いてもまともに受け答えが出来なかったため皆からは馬鹿にされていたという人物でした。

経久はこの松吉という大男をとても気に入り、武士に取り立てようとしました。だが松吉は幼い盲目の妹がいるとこの取り立てを断りました。ならば、と経久は松吉に心ばかりの米俵を与えて妹の元へ帰らせました。経久の部下にはそれを咎める者もいましたが、経久は小気味よく松吉を見送りました。経久は去っていく松吉を、惜しいとは思いつつも気持ち良く見送ってやったのです。

さて、此処で終わればいい話ですが、後編があるとはそういう事です・・・。