尼子経久、敵を討つ・後

さて数年の月日が流れました。とある日、経久はふとあの松吉の事を思い出して部下に今松吉がどうしているのか調べさせました。しかし部下の報告は、松吉が既に亡くなっているという非常に残念なものでした。

しかし、経久はその報告に納得がいきません。

松吉が住んでいた地域の周辺は完全に尼子家の勢力圏であり、戦もありませんでした。それなのにどうしてあの豪勇の士が死んだというのか。経久は再び部下を呼び、松吉の事を更に調べさせました。そこで分かったのは、凄惨な理由でした。

松吉はその性格ゆえか、村人達に非道な虐めにあって殺されたというのです。しかもその上その亡骸までも辱められるという扱いを受けており、松吉の盲目の妹は村人達に慰み者にされたあげくに殺されたという、何とも惨たらしい報告が届きました。

豪勇の士を遇することを知らぬ者達のあまりの仕打ち。これに烈火の如く怒った経久は、即座に虐めの首謀者らを捕らえ打ち首にし、その首を松吉の墓前に供えて霊を丁重に弔ったといいます。あの時無理にでも配下にしていれば、そんな無念さが経久にはあったのかもしれませんね。

尼子経久、敵を討つという逸話です。しかし謀略の人物ほど領民らに優しいですね。こんな人物だからこそ、山中家が命をかけて御家再興をしようとしたのかもしれません。