山中と秋上・前

さて今回は尼子十勇士の一人としてその名を数えられる、秋上伊織助と山中鹿之助の話をしましょう。以前にも出てきた秋上伊織助は弓の名手でも知られる、尼子家の勇将であり、山中鹿之助とも旧知の中です。

そんな伊織助の秋上家は出雲の国の大宮司であり、無二の尼子方でした。ですが鹿之助によって擁立された尼子勝久が「もし本意を遂げて出雲に入れたら秋上・山中を執事とする」と約束していたにも関わらず、次第に山中鹿介の方針ばかりを重んじるようになってきていました。これに伊織助の父・三郎左衛門尉は不満を抱いていました。

さてそこに誘いをかけてきたのは吉川元春。あの毛利元就の次男です。また毛利です。まぁ元春より「うちなら優遇するよ!」とお手紙がきました。これを受けた三郎左衛門尉、渡りに船と喜び、毛利家に味方する事に決めてしまいました。

さて、三郎左衛門尉の嫡子であった伊織助、たった一人で鹿介の宿所に赴いて面会を申し入れました。

「こんな事になってしまってから会いに来るなど、面目もないとお思いだろう。しかし私と君とは少年のころから仲良くしていて、死ぬなら共にと約束した仲だ。だが愚父は毛利家に属すと決めてしまった。明日からは敵になるだろう。そうなればこうして会って話をすることもできなくなる。君とは朋友としていつまでもともにいたかったのだが、残念だ。これまで仲良くしてくれてありがとう。今日は別れを言いたくてここまで来たのだ」

出てきた鹿之助に伊織助はこう言ったと言います。