戦国の異名と、魔王・5

戦国の世に現れたリアル・クリーチャ―武田光和の逸話はまだまだ終わりを見せません。

さてそれは当時のこと。安芸佐東郡には一つの古い文殊堂があり、そこに化け物がおり人を化かすとの噂がありました。それを聞きつけた光和は誰か行って退治せよと
近習の者に命を下すと、青木某というものが承り化け物退治に出かけていきました。しかし彼は散々に化かされ、這う這うの体で帰ってきました。

それを見た光和はならば俺がやってやろうと一人文殊堂に出かけていきました。化け物如きで怯える武田光和ではありません。この戦国の世で一番怖いのは人の形をした何かですから。

夜も更けて、静かな夜空の元で何とはなしに不吉な予感がした光和。辺りを見渡すと、一人、60は超えていそうな盲人が荷物を持ち、杖を突きながら文殊堂に歩み寄ってきました。これが例の化け物だろうかと光和は警戒していますと、相手は声をかけてきました。

「誰かいらっしゃるのですか?どなたでしょう?」

「おおここにおるぞ。法師よ、お前はどこの者だ?」

どう見ても怪しい人物ですが、とりあえず会話から試みる光和。どっかの鬼とは違う

「私は厳島に住んでいる者です。しかし最近はこの暑さに参ってしまい、ここで寝泊まりをしながら里の人達に歌を聞かせて生計を立てております。もしや貴方はお侍さまでしょうか?」

「おうその通りよ」

「一曲いかがですか?」

「では平家を頼もうか」