戦国の異名と、魔王・10

さてまたそれから暫く後、今度は禅宗の僧が道に迷ってこの山に通りかかりました。僧は山で寝食をして、夜は座禅などしていたようです。すると突然空が曇り雨が一しきりに降った後大きな松風が吹くと、やがて山が崩れるかの様な音がしました。

恐ろしくなった僧はひたすらに「魔界仏界同一如」と念じていると、年のころ三十余りの大の男が鎧を着て、鉄の弓を持ち、鉄の矢を負い、葦毛の馬に乗って飛んできたではありませんか。その上その後に、同じく四十ばかりの男が八尺ばかりの金棒と大まさかりを左右に持ってついてきました。

二人が物をいうのを見ていると口から火を吐いており、主と思われる男が「小河内」と呼ぶと、「はい」と六十ばかりの頬にひげの沢山生えた老人が大地から湧き出てきました。もうこれだけで発狂ものですお坊さん凄い。

さて主人らしい男は「これにお客のお坊さんがおられる。おもてなしを。」というと、小河内は「承りました」と湯玉の湧きかえる熱鉄をちょうしに入れ、鉄の杯を添えて持って来ました。そして男は僧に向かい、

「宗門には熱鉄を飲むの句がある。貴僧に一杯おすすめしょう。では先ず試しに自分が飲んでみせよう」

と、三度杯を傾け、その後また言葉を続けました。