謀聖、旧城に帰り咲く・2

こうして塩治掃部助を討ち城を取り戻そうと立つ経久と山中一族。しかし塩治は国の守護代として多くの兵を抱えており、容易に討つことはできません。ここで謀聖・経久は策を巡らし、河原者と呼ばれる、祭や芸事を行う身分の低い者達の頭である鉢屋を召し寄せました。

「お前も知っての通り、私はこの出雲の国を追い出されてからというもの、耐え難い思いをしている。何としても塩冶を討ち、この遺恨を晴らしたい。それに付いてはお前に頼みたい事がある。もし我が本望を遂げたあかつきには、褒賞は望みのままに取らす事を約束しよう」

「恩のある侍を差し置いて私達のような身分の賤しき者を頼りにして頂けるとは、これほどの名誉はないでしょう。この上はたとえこの身も一族をも亡ぼそうとも何も恐れはいたしません。何なりと御指図ください」

平伏してそう申し上げた鉢屋に経久は喜び、ある策を授けました。

鉢屋達は例年、正月には富田の城の二の丸で卯の上刻から千寿万歳の舞を行っています。しかし経久が言うには来年の際にはその時間を早め、寅の刻に舞を始めろというものでした。

「そうすれば本丸の者共も二の丸へ出てきて舞を見るだろう。我々は城の搦手から忍び込んでおいて方々へ火をかけながら本丸へ打って入る。その声を合図にして汝らは大手より切り込んでくるのだ。こうして前後から攻め合わせれば、城を乗っ取ることは容易いであろう」

鉢屋はこれを受け、経久は城を取り戻すべく今暫し苦渋を耐え忍びます。