陶晴賢と乳兄弟・後

ふざけた呼び名で主君を呼んでいたせいで(おそらく晴賢も酔いがまだ残っていたのではと思われますが・・・)斬首になってしまった近習。実はこの近習は隆房の乳兄弟で、父親も隆房が赤子のころから養育係として仕えている人物でした。

さて酔いがさめて冷静になってきたのか晴賢は父親を呼んで成り行きを話し、近習の死骸を弔ってやるようにと言うと、なんと父親は息子の遺体を庭に突き落とました。晴賢が驚いて咎めると父親は

「主君に対してこのような無礼を働く不届き者は私の息子ではありません。天魔か狐の類でしょう」

と言いました。しかしこの父親、他の人にも悲しみを見せなかったが、夜になるとこらえきれずに涙で枕を濡らしたと言います。口ではそう言いながらも、やはり息子を失った悲しみは大きかったのでしょうね。何だか徳川の安藤帯刀の逸話を思い起こさせます・・・・。

しかしそれでも父親はその後も隆房を恨む気配もなく、一途に仕えて続けました。これにより晴賢も隆房も自分の行いを恥じて、近習を殺したことを悔み続けていたと言います。

この逸話を見るに、悪い人間ではないのですが、やはり陶晴賢という人物はカッとなると周囲が見えなくなるような性格ではなかったのかと思わせますね。

ともあれ皆さんもお酒の席では気をつけて下さい。