「武士に逃げるという事はない」

今回は賤ヶ岳の戦いでも少し語った、官兵衛のピンチの頃に起こったお話をしましょう。

秀吉軍の出城に破竹の勢いで襲いかかる佐久間軍。その勢いに最前線の砦を守っていた官兵衛も覚悟を決め、重臣の栗山利安を呼びます。そして15歳になる息子・長政を連れて逃げるように命じました。利安もまた最期までお伴したいと願い出て官兵衛の命を聞こうとしなかったが、官兵衛の懸命の説得にて長政を抱えて泣く泣く砦を脱出しました。だが連れ出された長政は砦から一里ばかり離れたところで何かおかしさに気付いたのか、 利安に尋ねました。

「利安、我らはこんなに急いでどこに向かう?」

長政は嘗て竹中半兵衛に連れられ、信長から落ち伸びた過去があります。この時も事態が尋常ではない事を察したのかもしれません。若君の言葉に、利安も本当の事を話してしまいます。驚いた長政は今すぐ砦に戻ると言い出しましたが、これを利安は必至で説得しようとしました。だが長政はきっぱりと言い切りました。

「子が父を見捨てて逃げ、どの面下げて生き延びるのだ!それに 『武士に逃げるという事はない』と教えてくれたのは父上だ!!」

長政は馬を蹴りたて、砦に駆け戻ります。その後ろを感涙しながら利安も後に続きました。

「あぁ、あの方こそ間違いなく、官兵衛様のご子息であらせられる」

その後、 黒田親子は秀吉の大返しまで必死に砦を守り抜き、後の大大名に家を繋げていく事になります。しかしこの家族でも争う戦国の世の中ですが、黒田親子は本当に仲がいいですね。