官兵衛曰く「博打は…」

さて今回から数回官兵衛の逸話を紹介してから、続きの話に参りましょうか。

その昔、黒田家では賭博はご法度でした。しかし人間、禁じられている方がやりたくなるのか、禁じられていてもやる奴はやるのか、とにかくやる人間が出ました。黒田家の家臣・桂菊右衛門という名の男です。

桂菊右衛門ははその夜博打で大勝ちして羽織に戦利品を包んでほくほく顔で朝帰りの家路をについていました。ところがある事に気がつく。この道は大殿が仕事に出る時に通る道ではなかったか。鉢合わせしては大変だ…そう思っているとなんとビンゴ!角を曲がった所でばったり大殿・黒田官兵衛と会ってしまった!ここで本人大慌て、必死に叫んだのは次の言葉。

「某は博打の帰りではございません!」

ヤッチャッタネ!人間焦ると何を言うかわからないとはこの事である。

しかし官兵衛はその場では何も聞かなかったように通り過ぎる。だが考えて欲しい。こんな事叫んじゃばれているに決まっている。自分はもう切腹決定だと塞ぎ込んだ。諸事情を聞いた同僚達も「まぁそりゃお前切腹だよね」沈痛な表情で見舞いに訪れました。もちろん命も知れぬ身では金どころではなく、戦利品の包みはその辺に放置され中身も確かめないまま。

しかしそれを聞いて当の官兵衛、菊右衛門を大笑いしながら訪ねてこう言った。

「まあ勝ったところで博打は打ち止めにしておくように。人間いい事の後には悪い事があるもんだ。今朝みたいなことを言い出すのも決まりをを恐れての事。そんなに命が大事と思うなら今度からどんな決まり事も破らぬようにする事だ。今回は許すがその内身代を擦り切らせたなんて話を聞いたら今度こそ罰を与えるぞ。とにかく、博打に限らず無駄遣いしたりして擦り切らないように気をつけろよ」

官兵衛はこのように、落ち度があっても厳罰に処す事はなく、相手に非を悟らせ機会を与えたので非常に仕えやすかったそうです。正に理想の上司、という感じですね!うっかりがなければ