前回より続き。
そんなこんなで鬼武蔵こと森長可に招かれて金山に訪れてしまった土佐三河守悪五郎。字面だけ見ると物凄く似たり寄ったりな気がしますね本当に。
ともあれ招かれた悪五郎は長可に丁重にもてなされた。鹿の汁物など色々な物を出してもてなされたという。そのもてなしは夕方近くまで続いた。豪勢なもてなしを受けた悪五郎は上機嫌で帰りの道を進んでいく。そんな悪五郎の前に一人の男が現れた。
「待っていたぞ土佐三河守悪五郎!我こそは貴様に殺された斎藤大納言が嫡孫、加木屋宇右衛門正則である!」
「な、何だと!?」
ここ、金山は昔は鳥峰城という名前であった。そして鳥峰城の主斎藤第納言は二十五年前に花見の席と偽って、とある男の呼び出しを受けて暗殺された。その呼び出した男こそ、土佐三河守悪五郎である。こうして加木屋は悪五郎を見事討ち果たし宿願を叶えた。ここだけ見るととても良い話である。
もちろんこの加木屋を招き入れていたのはご存知鬼武蔵である。加木屋の宿願をお膳立てしたと言えば聞こえはいいが、本人は自分にとって邪魔な悪五郎を始末してもらった方である。
そしてこの話はまだまだ続きがある。鬼武蔵の呼び名は伊達ではないのである。